肩こりとは、坐骨神経痛同様に決して病気の名前ではありませんが、日本人の多くを脳ませている症例です(何故か日本人に多いそうです)。

大まかな原因としては、まず運動不足が挙げられます。これはただ単純にスポーツや体操をしないということではなく、仕事においても家庭においても決まりきった身体の動かし方しかしていない、という要素が大部分を占めます。要するにバランスのとれた身体の動かし方をしていないということです。世間を見回してみてもこれほど多くの人達がゴルフやテニスにいそしみ、スポーツクラブに通ったりしているのに尚、肩こりに悩まされているという事実からもお分かりいただけると思います。とりわけ昨今の会社勤めの方々のように、一日中パソコン作業だけしかしていないという偏った環境においては顕著です。

肩こりを訴える方々をよく診てみると、不快感を訴えている部位は実際には頚または頚の付け根、肩甲骨の内縁(要するに背中)が多く、肩こりというよりは頚こりといった感じです。だた肩関節の可動域に偏りがあり、全体的に緊張が強いため凝り固まった状態ではあります。

「肩こり」が起こるのは身体がどのような状況に置かれている場合でしょうか。
これを理解しないとこの症状を解決することは出来ません。


図のようにずっと椅子に座り放しでパソコン作業をしているとします。
大体オフィスの机に置かれているパソコンの画面の高さが低いので、全体的に前傾姿勢をとりながら顔だけは正面を向かせているため、後頚部の筋肉が後屈位をとり続けます(図@)。これに伴い左右の頚(特に利き腕側)をすくめるように力を入れ続けるのです(図A)。またこの状態では、肩関節を構成する上腕骨頭が後方から前方に押し出される力が働き続けます(図B)。
このような状態でマウスやキーボードを操作するのですが、これらの動作は手指や前腕部つまり肘から先の部分の筋力に偏って頼るため、肘・腋・胸・肩・背中は緊張させられ一体化します。そうしないとマウスやキーボードの操作中にブレてしまうからです。

筋肉が緊張するということは、「力を入れる=収縮する」ということです。この筋肉の緊張・収縮に伴い、関節の隙間は押し縮められ「遊び」を失います。そしてこの際関節を支える靭帯や関節包といった軟部組織が、関節を正しく動かすことで得られる「伸び縮みする刺激」を受けることが出来なくなり、長期間にわたる緊張の結果「萎縮→短縮→癒着」という結末を辿ります。そしてこれこそが肩こりにおける深部の痛みや不快感の最大の原因なのです。
テレビや雑誌等のメディアから一般の人達に垂れ流されている情報では「僧帽筋の緊張が肩こりの原因」ということになっており、また多くの施術者も大して勉強も研究もせずにこれを鵜呑みにして悦に入っておりますが、実は僧帽筋の緊張は原因ではなく結果として顕われる症状の一つに過ぎません。先に説明したような変化が深部で起こり、それが僧帽筋を緊張させているのです。ですから深部で萎縮している筋肉や靭帯等をほぐし、関節の遊びを取り戻してやれば僧帽筋は簡単にほぐれます。更に言えば、僧帽筋は脳から直接出ている神経である「副神経」の支配を受けている筋肉なので精神面での影響も大きく受けてしまいます。ネガティブな精神状態に置かれた場合僧帽筋は緊張し、不安や怒りが取り除かれると緊張から解放されるのです。

先の図の@〜Bのような偏った身体の使い方を長時間・長期間続けることにより、頚椎椎間関節・肩関節、場合によっては肩鎖関節・胸鎖関節・肘関節・手首の手根関節の「反復性の捻挫」の様相を呈することもあります。そしてこれは意外にも多くの人達に見られます。このような人達の「肩こり」という症状に対し「捻挫」を治療するための処置を施すと、症状にかなりの軽減が見られます。これに加え、本人がこのことをきちんと理解し、自らの生活習慣を含め「バランス」というものにもっと目を向けることがとても大切です。

このように肩こりといえどもきちんとした原因があり、それが捻挫や挫傷のようなケガである場合も多いのです。
また、脳・神経的な原因からも起こりますので、決して軽く考えてはいけないものなのです。